ParamountによるWBD買収で誰が損をしたのか

Warner Brothers Discovery(WBD)はSkydance Paramountによる、一株あたり$31での敵対的買収に応じ、Netflixによる買収は無くなった。これで、一番徳をしたのはWBDのトップである。Netflixによるオファーよりも高く会社を売ることが出来、大きなボーナスを得ることが出来る。しかし、理由は後記するがこの買収はWBD自体には良いことでは無いかも知れない。

NetflixはWBDを得ることが出来なかったが、損をした訳では無い。Netflixは「あの価格で手に入れることが出来ば良いことで、どんな価格でもどうしても手に入れなければならないものでは無い」と語っている。Netflixによりハリウッド征服にWBD買収は出来れば良いことだが、絶対必要ではない。買収に使うはずであった$827億があれば、別の方法での攻略も可能である。もし、Skydance ParamountのWBD買収が成功しなければ、チャンスは逆に早まるかもしれない。

ATSC 3.0外付けチューナー普及の問題点

ATSC 3.0は伸び悩んでいる。放送は世帯の75%で視聴可能になっているが、ATSC 3.0対応テレビは売れず、アンテナでのテレビ視聴者も増えていない。次世代放送の視聴者はまだ、数パーセント程度でしかない。放送局所有会社は大都市では2028年、その他の都市では2030年にATSC 1.0を停波し、3.0への移行を実施しようとしている。既存のATSC 1.0での放送が無くなれば、視聴者はATSC 3.0に移行せざるを得ないという、ショック治療である。

これを成功させるのにはATSC 3.0対応のテレビを買いやすくする必要がある。しかし、ATSC 3.0対応のテレビを販売しているのはSamsung、Sony、Hisense、TCL、Panasonicの5社だけであり、機種はハイエンドに限定されている。放送局所有会社のコンソーシアムのPearl TVはATSC 3.0対応テレビの普及のために、$60程度で購入出来る外付けチューナーの普及を新たな目標に掲げた。

2026年は放送業界の再編成の年

Warner Brothers Discovery(WBD)は多チャンネルネットワーク事業を分離し、スタジオ事業とHBO(有料チャンネルとストリーミングサービス)をNetflixに売る。ComcastはNBCUniversalの多チャンネル向けネットワーク事業をVersantとして今月にスピンオフした。多チャンネル事業者では1位のCablevisionは多チャンネル事業者としては9位、ケーブルTV事業としては3位のCox Communicationsを買う。地上波放送局会社としては全米に200以上の局を持つ最大手のNexstarは4位のTegnaを買収する予定である。

放送業界の再編が活発になっているのには2つの理由がある。1つは放送事業がついに破綻し始めたからである。ピークでは世帯の86%が加入していた多チャンネルサービスの加入者は50%を割ろうとしている。ケーブルTV事業者はブロードバンドにフォカスし、収入を増やしてきたが、最近では通信事業者の5Gを使った固定ブロードバンドに加入者を奪われ、ブロードバンド加入者も失っている。

NetflixのWarner Brothers買収

2010年に当時のTime WarnerのCEOであったジェフ・ビュークスはNetflixの脅威に対して「アルバニア軍が世界を制覇出来るのか」と答えた。15年後にNetflixは世界最大のストリーミング事業者になった、Warner Brothersを買収を発表した。Warner Brothers Discovery(WBD)はまず、赤字になっているCNN、TNT、Discovery等の多チャンネル向けネットワーク事業を切り離し、スタジオ、それに有料チャンネルとストリーミング事業のHBOで構成される新Warner Brothersになり、その会社をNetflixが買収する。

DisneyとYouTube TVの再送信契約の争い

DisneyはYouTube TVとの再送信契約の更新で揉めており、10月30日からYouTube TVではABC、ESPN等のDisney系のチャンネルが見られなくなっている。このようなチャンネルのブラックアウトではネットワークは広告収入を失い、多チャンネル放送事業者は加入者を失う。どちらも損害が多いので、多くの再送信契約の争いは短期で終了する。しかし、長い戦いもある。2023年のNexstarのDirecTVでのブラックアウトは76日間続いた。過去最長のブラックアウトはHBOとDish Networkで、2018年から2021年まで3年間も続いた。

DisneyとYouTube TVの争いも長期戦になる可能性がある。DisneyにはESPNと言う大きな武器がある。特に、今はNFLのシーズン中であり、NFLファンの加入者を失うので、通常の多チャンネル放送事業者であれば、すぐに折れるであろう。しかし、YouTube TVは最大のvMVPDサービスであっても、YouTube TVの収入Googleに取っては小銭である。Googleが不利になる条件であれば、長期戦も辞さないであろう。Disneyはブラックアウト期間中、1週間で$3千万の広告料を失っていると推測されている。しかし、DisneyはYouTube TVに競合するHulu with Live TVとFubo TVを持っており、ブラックアウトによりYouTube TVを脱退した加入者を獲得しており、得もある。