ATSC 3.0外付けチューナー普及の問題点

ATSC 3.0は伸び悩んでいる。放送は世帯の75%で視聴可能になっているが、ATSC 3.0対応テレビは売れず、アンテナでのテレビ視聴者も増えていない。次世代放送の視聴者はまだ、数パーセント程度でしかない。放送局所有会社は大都市では2028年、その他の都市では2030年にATSC 1.0を停波し、3.0への移行を実施しようとしている。既存のATSC 1.0での放送が無くなれば、視聴者はATSC 3.0に移行せざるを得ないという、ショック治療である。

これを成功させるのにはATSC 3.0対応のテレビを買いやすくする必要がある。しかし、ATSC 3.0対応のテレビを販売しているのはSamsung、Sony、Hisense、TCL、Panasonicの5社だけであり、機種はハイエンドに限定されている。放送局所有会社のコンソーシアムのPearl TVはATSC 3.0対応テレビの普及のために、$60程度で購入出来る外付けチューナーの普及を新たな目標に掲げた。

2026年は放送業界の再編成の年

Warner Brothers Discovery(WBD)は多チャンネルネットワーク事業を分離し、スタジオ事業とHBO(有料チャンネルとストリーミングサービス)をNetflixに売る。ComcastはNBCUniversalの多チャンネル向けネットワーク事業をVersantとして今月にスピンオフした。多チャンネル事業者では1位のCablevisionは多チャンネル事業者としては9位、ケーブルTV事業としては3位のCox Communicationsを買う。地上波放送局会社としては全米に200以上の局を持つ最大手のNexstarは4位のTegnaを買収する予定である。

放送業界の再編が活発になっているのには2つの理由がある。1つは放送事業がついに破綻し始めたからである。ピークでは世帯の86%が加入していた多チャンネルサービスの加入者は50%を割ろうとしている。ケーブルTV事業者はブロードバンドにフォカスし、収入を増やしてきたが、最近では通信事業者の5Gを使った固定ブロードバンドに加入者を奪われ、ブロードバンド加入者も失っている。

NetflixのWarner Brothers買収

2010年に当時のTime WarnerのCEOであったジェフ・ビュークスはNetflixの脅威に対して「アルバニア軍が世界を制覇出来るのか」と答えた。15年後にNetflixは世界最大のストリーミング事業者になった、Warner Brothersを買収を発表した。Warner Brothers Discovery(WBD)はまず、赤字になっているCNN、TNT、Discovery等の多チャンネル向けネットワーク事業を切り離し、スタジオ、それに有料チャンネルとストリーミング事業のHBOで構成される新Warner Brothersになり、その会社をNetflixが買収する。

DisneyとYouTube TVの再送信契約の争い

DisneyはYouTube TVとの再送信契約の更新で揉めており、10月30日からYouTube TVではABC、ESPN等のDisney系のチャンネルが見られなくなっている。このようなチャンネルのブラックアウトではネットワークは広告収入を失い、多チャンネル放送事業者は加入者を失う。どちらも損害が多いので、多くの再送信契約の争いは短期で終了する。しかし、長い戦いもある。2023年のNexstarのDirecTVでのブラックアウトは76日間続いた。過去最長のブラックアウトはHBOとDish Networkで、2018年から2021年まで3年間も続いた。

DisneyとYouTube TVの争いも長期戦になる可能性がある。DisneyにはESPNと言う大きな武器がある。特に、今はNFLのシーズン中であり、NFLファンの加入者を失うので、通常の多チャンネル放送事業者であれば、すぐに折れるであろう。しかし、YouTube TVは最大のvMVPDサービスであっても、YouTube TVの収入Googleに取っては小銭である。Googleが不利になる条件であれば、長期戦も辞さないであろう。Disneyはブラックアウト期間中、1週間で$3千万の広告料を失っていると推測されている。しかし、DisneyはYouTube TVに競合するHulu with Live TVとFubo TVを持っており、ブラックアウトによりYouTube TVを脱退した加入者を獲得しており、得もある。

ATSC 3.0の普及状況

アメリカのデジタル放送規格委員会のAdvanced Television Systems Committee(ATSC)は全米75%の世帯で4K対応のATSC 3.0が視聴可能になっていると発表している。これれにより、75%の世帯がATSC 3.0を視聴している、あるいは4K放送が75%の世帯に普及している等の誤解が生まれている。しかし、実際のATSC 3.0の普及率は数パーセントであり、放送波による4Kの視聴はゼロが実情である。